WordPerfect

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
WordPerfect
開発元 ワードパーフェクト社、ノベルアルド
最新版
2021
プラットフォーム Microsoft WindowsIA-32開発)
種別 ワードプロセッサ
ライセンス プロプライエタリ
公式サイト WordPerfect Website
テンプレートを表示

WordPerfect(ワードパーフェクト)は、かつてクロスプラットフォームで提供されていた、カナダアルドワードプロセッサソフトウェア。1980年代末から1990年代初めにかけて、一時デファクトスタンダードとなったが、その後Microsoft Wordの台頭によって圧倒的に占有率を失った。MS-DOS版と Microsoft Windows版だけではなく様々のプラットフォームやオペレーティングシステム上に移植されており、当時はMac OSLinux、各種UNIXVMSSystem/370AmigaOSAtari STOS/2NeXTSTEPなどで動作した。

1994年にWordPerfectはノベルに売却され、1996年にはコーレルに売却(コーレルはその後アルドに改称)し、現在はQuattro ProプレゼンテーションソフトとバンドルしたWordPerfect Officeの一部として、Windows版のみ販売されている。

WordPerfect for DOS[編集]

WordPerfectを最初に開発したのは、ブリガムヤング大学の学生ブルース・バスティアン(Bruce Bastian)とアラン・アシュトン(Alan Ashton)教授であった。サテライト・ソフトウェア・インターナショナル社(Satellite Software International, Inc.)をユタ州で創設し、後に社名をワードパーフェクト社(WordPerfect Corporation)に改称した。最初のバージョンはデータゼネラルミニコンピュータ向けで、それを1982年にIBM PCに移植したWordPerfect 2.20が登場した。バージョン番号はデータゼネラル版と連続している。

人気を得るようになったのは、1986年のWordPerfect 4.2からであった。このバージョンでは、段落のナンバリング機能や脚注の自動挿入(多い場合に次のページに一部を割り付けるなど)といった機能を持っていた。WordPerfect 4.2は当時最も人気のあったWordStarからトップの座を奪い取った。

1989年、WordPerfect 5.1 for DOSがリリースされた。このバージョンではMacintosh風のプルダウンメニューを採用し、表計算ソフトのような作表機能も備えていた。WordPerfect 6.0 for DOSでは、従来型のテキストモードとグラフィックスを使ったWYSIWYGモードを備え、太字、下線、斜体といったテキスト効果が表示可能であった。

主な特徴[編集]

  • ストリーミング・コード・アーキテクチャ - HTMLCSSのようなフォーマットを採用。HTMLのように入れ子になったタグで文書の設定を保持する。
  • スタイルとスタイルライブラリ - ストリーミング・コード・アーキテクチャに対応したスタイルシートに相当する部分。WP 5.0 から。
  • Reveal Code - タグなどを表示する補助エディタ画面。この画面で表示される各種トークンをクリックすることで、スタイルエディタなどが起動でき、非常に細かい編集が可能。
  • 高機能なマクロ言語。後にPerfectScriptとなる。
  • 各種プリンタドライバを同梱し、プリンタドライバエディタPTRでユーザーが独自のプリンタドライバを開発可能。なお、WordPerfectは独自の文字コードを内部で使用していた。

WordPerfect Library/Office[編集]

ワードパーフェクト社は、付随するスピンオフ製品として1986年にWordPerfect Libraryをリリースし、後にWordPerfect Officeと改称した。これは、WordPerfectと共に使えるネットワーク機能や独自ユーティリティの集合体であり、NetWareを使っているオフィスでの利用を想定していた。以下のような機能が含まれる。

  • Shell - タスクスイッチャー。Windows 3.xにほぼ匹敵し、しかもWindowsよりも安定していた。
  • Calculator - 電卓機能
  • Notebook - フラットファイル型データベース
  • DataPerfect - 関係データベース

なお、後にコーレルがWordPerfectを買収し、WordPerfect Officeという名称をコーレル社のオフィススイート・ソフトウェアの名称として活用している。

WordPerfect for Windows[編集]

WordPerfectのWindows版の登場は遅かった。1991年にはWordPerfect 5.1 for Windowsがリリースされたが、DOSからインストールする必要がある上、安定性に重大な問題があった。1992年には、安定動作するバージョン5.2がリリースされたが、すでにMicrosoft Word for Windows version 2がリリースされてから1年が経過していた。WordPerfectのファンクションキーを中心としたインタフェースはWindowsに馴染まず、各種キーの組み合わせもWindows自身のキーボードショートカットと非互換を生じていた(例えば、Alt-F4 は「プログラム終了」だが、WordPerfectでは 「ブロックテキスト」)。注力していたプリンタドライバもWindowsでは不要となってしまった。

Windows版でもWordPerfectは独自の文字コードを内部で使用していた。このため、中国語などWindowsが対応した言語に対応できない事態が発生した。

ワードパーフェクト社は1993年、ボーランドとの相互ライセンス契約を締結し、WordPerfectはオフィススイートBorland Officeの一部となった。これには、他にQuattro ProBorland Paradox、WordPerfect Officeが含まれていた。その後、このWordperfect商品群は1994年6月にノベルに売却され、1996年1月にコーレルに売却された。ただし、ノベルはWordPerfect Office全体を売却せず、その技術をGroupWiseに流用した。

その後もWordPerfectはトラブルに見舞われた。Windows 95のリリースから9カ月後の1996年5月、32ビット版の WordPerfect 7がリリースされた。これは安定動作せず、マイクロソフトから "Designed for Windows 95" のロゴも取得できなかった。さらに、最初の WordPerfect 7は Windows NTで動作しなかった。NT対応のWordPerfect 7は遅れ、1997年にリリースされたときには NT 4.0がリリースされて6カ月が経過していた。

マイクロソフトは、Microsoft WordをプリインストールするPCメーカーにはWindowsを値引きするという作戦でシェアを伸ばしていった。WordPerfectは主に司法関係と学術関係で生き延びている。例えば、2005年にもアメリカ合衆国司法省がWordPerfectを大量に購入した[1]。2004年11月、ノベルはマイクロソフトを反トラスト法違反で訴えた[2]

WordPerfect for Macintosh[編集]

Macintosh向けのWordPerfectは他のオペレーティングシステム向けとはバージョン番号等も異なっていた。最初の1.0版はDOS版などのユーザー向けであり、それほど成功しなかった。2.0版は完全な書き換えがなされ、Mac OSのUIガイドラインに準拠するよう改良された。3.0版はその方向性をさらに推進した。1995年にリリースされた3.5版と若干の改良を施した3.5e版(1997年)を最後として、Macintosh版は開発されていない。2004年、コーレルは改めてWordPerfect for Macintoshを開発する予定がないことを明らかにした。

数年間、コーレルは3.5e版をウェブサイト上で公開し、無料でダウンロード可能にしていた。ただし、PowerPC版Mac上のクラシック環境で動作するソフトウェアであるため、インテル版MacではSheepShaverなどのエミュレータを必要とする。

WordPerfect for Linux[編集]

1996年、カルデラがインターネットオフィスパッケージの一部としてLinux版WordPerfectをリリースした。草創期の商用Linux市場に足場を作ろうとしたコーレルも、独自のLinux版(Corel Linux)を開発した。

Linux版自体は好意的に受け止められたが、WordPerfectへの反応は様々であった。有名なアプリケーションがLinuxに移植されたことを単純に喜ぶ向きもあったが、オープンソースコミュニティの反応は冷ややかで、OpenOffice.orgのようなフリーウェアが主流の市場で、プロプライエタリなワードプロセッサがどれだけ支持されるかが疑問視された。また、WordPerfect 9.0はネイティブなLinuxアプリケーションではなく、Windows版をWine上で動作させるもので、安定性が批判の的となった。

結局、WordPerfectはLinux市場では受け入れられず、コーレルの方針転換もあって、9.0(2000年)を最後として開発が終了し、Linux版もXandrosに売却された。2004年4月、コーレルは最後のLinuxネイティブ版だった8.1を若干改良して、Linux市場の調査を兼ねてリリースした。2005年以降、WordPerfect for Linuxは販売されていない。

バージョン[編集]

Data General MS-DOS Apple DOS AmigaOS VAX/VMS Mac OS NeXTStep OS/2 Windows Unix Linux Java
1980年 1.0
1981年
1982年 2.0 2.2
1983年 3.0
1984年 4.0
1985年 4.1 1.0
1986年 4.2 1.1 / 2.0
1987年 4.1 4.1
1988年 4.2 5.0 4.2, Office* 1.0 - 1.0.7 4.2
1989年 ?* 5.1 2.1e (final) 5.0
1990年 2.0 5.0
1991年 1.0.1 5.1
1992年 2.1 5.2 5.1
1993年 6.0 3.0 5.2[3] 6.0
1994年 5.1+ 3.1 5.2+, 6.1 6.0
1995年 6.1 3.5
1996年 7.0 (32-bit) 6.0
1997年 6.2 3.5e 8.0, 7.0 (16-bit) WordPerfect for Java
1998年 7.0
1999年 9.0 * 8.1
2000年 9.0
2001年 10.0 *
2003年 11.0 *
2004年 12.0 *
2006年 X3 * (13.0)
2008年 X4 * (14.0)
2010年 X5 * (15.0)
2012年 X6 * (16.0)
2014年 X7
2016年 X8
2018年 X9
2020年 2020

(* - WordPerfect Office の一部)

  • VAX/VMS版には5.3[4]と7.1[5]もあるが、リリース時期不明。
  • SunOSまたはSolaris版として6.0があったが、リリース時期不明。
  • IBM System/370版として4.2が1988年にリリースされた。
  • OS/2 版として5.0が1989年にリリースされた。
  • DEC Rainbow 100版が1983年11月にリリースされている。

上記以外のバージョンとして、Apricot、Atari ST、DEC Rainbow、Tandy 2000、TI Professional、Victor 9000、Zenith Z-100向けがあった。また、30種類以上のUNIX向けも存在した(AT&T、NCR、SCO Xenix、Microsoft Unix、DEC Ultrix、Pyramid Tech Unix、Tru64、AIX、Motorola 8000、HP9000、SUN 3など)。

最新版(X3以降)[編集]

2006年1月17日、コーレルは WordPerfect X3を発表した。コーレルはOASISのオリジナルメンバーでもあり、OpenDocumentの仕様策定にも深く関わっている。しかし、OpenDocumentOffice Open XMLのサポートはされず、ベータ版のリリースにとどまっていた[6]

2008年4月、コーレルはオフィススイートWordPerfect Office X4をリリースした。これに含まれる新しいWordPerfectでは、PDFOpenDocumentOffice Open XMLがサポートされている。

2010年3月、コーレルはオフィススイートWordPerfect Office X5をリリースした。これに含まれる新しいWordPerfectでは、PDFOpenDocumentOffice Open XMLに対するサポートの強化のほか、Microsoft Windows 7への対応などがなされた。

2012年4月、コーレルはオフィススイートWordPerfect Office X6をリリースした。これに含まれる新しいWordPerfectでは、マルチ・ドキュメント/モニタ機能や新しいマクロ機能、Windows 8プレビュー版のサポート、eBookパブリッシャーが含まれる。[7]

2014年4月、WordPerfect Office X7リリース[8]

2016年4月、WordPerfect Office X8リリース[9]

2018年5月、WordPerfect Office X9リリース[10]

2020年5月リリースの最新バージョンは、WordPerfect Office 2020に含まれている[11]

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]